家庭教師をしていると、色んな保護者や生徒に会います。その中に、不登校になってしまった子供たちがいます。
不登校になってしまった児童には何らかの理由あります。そして、不登校のために学校の勉強が大幅に遅れているかもしれません。
また、対人関係に不安を感じているかもしれません。ではあなたはそんな彼らに、どのように接することができるでしょうか。
今回は、不登校児童とのコミュニケーションの仕方や勉強の教え方を一緒に考えてみましょう。
不登校児童の現状について
不登校という社会問題は、21世紀に入って10年以上経てもなお、解消されずにいます。
「年間30日以上欠席した児童生徒のうち、病気や経済的な理由を除き、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者」
その状況にある子どもは全国的に約17万人以上いるといわれています。(※平成26年度 文部科学省調べ)特に中学生の不登校数は、小学生の約5倍の数となっており、学年が上がるごとに数が多くなっております。
また小学6年生から中学1年生にかけて急激に不登校児童生徒数が増加しています。小学校から中学校への環境変化についていけず、不登校に陥る生徒が増えており「中1ギャップ」と呼ばれています。
小学生では「家庭の生活環境の急激な変化」「病気による欠席」、中学生では「あそび・非行」「学業の不振」と、年齢に応じて理由も変化しているのがわかります。
小学生・中学生ともに多いのが「不安などの情緒的混乱」「無気力」「親子関係をめぐる問題」「いじめを除く友人関係をめぐる問題」といった理由になります。
教えるよりもまずは話そう
私自身も不登校児童を家庭教師として担当したことがあります。
その時の教師心理として、何とか学校の勉強に追いつかなければと思いがちです。そのため週二回の授業であったとしても、必死に授業ペースを上げなければと考えていた時期もありました。
しかし実際は、全く逆なのです。勉強を教えるよりも、教師と生徒との関係を作る方が良いのです。
ですから、まず生徒と話しましょう。
親御さんの許可があれば、最初の授業はほとんどを会話のために使っても構わないこともあります。不登校児童の親御さんは、成績を上げたいと思っている方は少ないように感じます。
むしろ学校の勉強についていくこと、勉強の習慣をつけることを目的に家庭教師を依頼しています。
ですから、ゆっくりで良いので、じっくりと生徒とコミュニケーションを取るようにしたいと思います。
彼らの趣味は何ですか。
何の教科が好きですか。
普段は一日をどのように過ごしているでしょうか。
そうした何でもないことで良いので、聞いてみるようにします。
もしかしたら、最初はほとんど反応がないかもしれません。
話しかけても、本当に意味があるのかなと不安に思うこともあるでしょう。
でも諦めないようにしましょう。
むしろゆっくり、はっきりと話したいと思います。
彼らは不登校になっています。
他の子供たちに比べて、圧倒的に人と接する機会も少なくなっています。
ですから、そのことをしっかりと考えるようにしましょう。
そして、コミュニケーションをとり続けていくようにしましょう。
コミュニケーションの取り方
最初から普通にコミュニケーションを取ることは難しいでしょう。なぜなら彼らは、学校に行くことができないためにコミュニケーションが不足しがちだからです。
その彼らに普段のコミュニケーションを求めることは酷と言えるでしょう。では具体的にどのように彼らとコミュニケーションを取ったら良いのでしょうか?
簡単な質問をする
簡単な質問をするようにしましょう。できれば、YesかNoで答えられるような二択の質問が望ましいです。
例えばこのように質問してみましょう。
「どんなスポーツが好きなの?」と言う代わりに、「野球とサッカー、どちらが好きなの?」と聞いてみることで、選択肢が少ない分生徒は答えやすくなるでしょう。
生徒の答えを我慢して待つ
もしかしたら、生徒の答えはあなたの予想よりも遅いかもしれません。そんな時は、何か話さないといけないと思って、さらに色んなことを話してしまいがちです。
しかしぜひ我慢して、生徒の答えを待ってあげてみて下さい。無言の時間が少し続くかもしれません。しかし生徒の答えを待つことにはメリットがあります。
辛抱強く待つことによって、生徒は「この先生は自分のことを尊重してくれる。信頼できる。」と少しずつ思ってくれるようになるでしょう。
自分自身のことを話す
ぜひあなた自身のことを生徒に話してあげて下さい。最初は生徒の反応が薄い、またはほとんどないかもしれません。しかし諦めないでください。
あなたが自分の経験やちょっとした雑談をすることで、少しずつ生徒の心が開いてくることでしょう。
勉強遅れが多い。不登校児童
不登校児童の場合は、学校に比べて勉強が遅れていることもたくさんあります。
ではその場合、どのように対処したら良いでしょか。
最初に、その生徒の分析をしましょう。
何の教科の勉強がどれくらい遅れているのか、またその理由は何かを考えてみるのです。
例えば、英語の勉強が遅れている場合を例にして考えてみましょう。
その生徒は今、中学3年生です。
現在完了形の範囲が理解できていません。
では、そのサポートから始めた方が良いのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
なぜでしょうか。
その範囲が、理解できていない理由を考えてみましょう。
単純に、現在完了そのものが分からないのでしょうか。
それとも生徒の総合的な文法や単語の力が不足しているためでしょうか。
特に、後者の場合が多いように感じます。
つまり英語の基本的な力が不足しているために、今の範囲の理解が遅くなっているのです。
これは何も不登校児童だけに限ったことではありません。
どの生徒にも起こりうる問題です。
そのような時は、時間がかかったとしても、中学一年生の範囲からやり直すようにしましょう。
Be動詞や一般動詞の違いだけでも解説してあげると、かなり伸びることがあります。
ぜひ焦らず、遠回りに見えたとしても、しっかりと弱点補強をしていくことにしましょう。
子どもが不登校(ひきこもり)になる原因
不登校になる児童には、色んなパターンがあると思います。
例えば、
- いじめ
- クラスに馴染めない
- 先生が嫌い
- 勉強のやる気がない
など、たくさんあります。これは、小学中学高校どれもにあてはまります。一度ひきこもりになると、外に出て誰かに合うのが怖くなりそうですよね。
心を開ける、相談できる、助けてくれる人が一人でもいると少し強くなれるかもしれないです。
なので、コミュニケーションをとる方法としては、まずなぜ学校に行きたくないのか、根気よく聞いてあげてください。そして頼りになるお兄さんお姉さんになりましょう。
雑談もたくさんして、人と関わることの楽しさを思い出させてあげるといいと思います。
不登校になってしまった子供と同じ立場にたって誰かと一緒に頑張る楽しさから教えてあげるといいですね。
不登校になってしまったら
不登校になってしまうと、やはり同じクラスの子供たちより勉強が遅れてしまい不安になってしまう親御さんも多いと思います。
でも何の教科がどのくらい遅れているのかさえわかれば今からでも大丈夫!!
やる気が出ないと勉強も頭に入らないので、まずはコミュニケーションを取って子供と向き合い、その子どもが興味のある教科から楽しく勉強をしましょう。
一番のポイントは、先生や親御さんが勉強が遅れていることに対して焦ったりしない事です。
遅れていて一番焦っているのは子供自身です。自分でもわかっているのに周りが焦っていると余計にやる気が無くなってしまうことがあります。
今からでも十分勉強する時間はありますよ。自分の興味のある教科から始めましょう!!
受験対策や進路相談等のサポートが大切
生徒が中学生で不登校児童だとします。
そうなると特に、これからの進路指導が心配ですね。
もしあなたが家庭教師会社から派遣されている場合、どうすれば良いでしょうか。
その生徒の担当者やアドバイザーと頻繁に連絡を取るようにしましょう。
メールや電話で構いません。
もちろん最初に、どのように授業を進めていくかを指示されることでしょう。
しかし授業を行う前と、実際に授業を行ってからでは状況が全く違ってきます。
授業後のほうが、より問題点がはっきりすることでしょう。
相談もしやすくなります。
ですから自分一人の力に頼らず、ぜひ経験あるアドバイザーに意見を求めるようにしましょう。
そうすれば、どんなメリットがあるでしょうか。
会社の担当者も、あなたたち教師のことを信頼してくれるようになります。
もしかしたら、新しい家庭教師の仕事を紹介してくれるかもしれません。
ぜひ気軽に相談したいと思います。
そして進路指導も行う必要があります。
ぜひ簡単なもので良いので、高校の情報などを集めて、生徒や親御さんに伝えるようにしましょう。
その場合も、主に会社の方に連絡して必要な資料を送ってもらうことができるかもしれません。
このように将来のビジョンを軽く見据えて、進路指導を行っていきましょう。
不登校児童の受験勉強
不登校児童の受験対策を行う時には、少し気を使うかもしれません。その生徒の状況によりますが、学校に行っていない期間が長いために勉強が遅れている、またはその分野が全くできないということもあります。
では不登校児童が受験を控えている場合、どのように指導したら良いのでしょうか?
まずは最初に生徒が不登校になった時期を把握するようにしましょう。本人に聞きにくい場合は、保護者に聞いてみて下さい。
その後で、理解できていない分野や範囲を探すようにしましょう。学校に行っていなくても、ある程度勉強ができる生徒もいるので、不登校期間だけでできないと決めつけることがないようにましょう。
次に、ポイントを絞って指導するようにしましょう。生徒の理解度にもよりますが、こうすることでかなり時間を短縮して教えることができます。
そして宿題を多めに出すようにしましょう。そうすることで、数が少ない家庭教師の授業数をカバーすることができます。
あなたが指導している生徒は、学校に行っていないので、宿題を多めに出しても問題はありません。ぜひ保護者と相談して決めるようにしましょう。
親との接し方
保護者は自分の子供の現在の状況や将来を不安に感じています。だからこそあなたに家庭教師を依頼しているのです。
では、不登校児童の親にどのように接したら良いでしょうか?
あなたは、普段授業前後に挨拶と授業報告を保護者にすることでしょう。時間にしたら合計で2~3分かもしれません。その時間をできれば、5分前後。通常よりも少し長めにしましょう。
不登校児童の親は、普通の親以上に子供のことを心配しています。ですから、普段よりも詳しく授業内容や今後の目標などを親に説明してあげて下さい。
その際には、ぜひ生徒の良い点を誉めてあげて下さい。生徒自身も親の前で褒められると自信がつきます。そして保護者も安心することでしょう。
このように少し詳しく授業前後の挨拶や報告を行うように心がけましょう。
親との連携の取り方
不登校児童の親と協力して生徒をサポートするには先ほども取り上げたように、授業報告をまめに行いましょう。
口頭で行うことも大切ですが、授業報告用の用紙があれば(家庭教師会社の指定の物など)それに書き込んで、保護者に渡すようにしましょう。
私の場合ですが、その書き込みは普段よりも詳細に書くようにしています。例えばこのようにです。
「本日の授業は、数学の二次関数を行いました。二次関数の基本の計算やグラフの描き方などが良くできていました。ぜひ褒めてあげて下さい。
今後の課題点としては、文章題を使った応用問題が苦手なようですので、その点を補強していきたいと思います。
宿題も少し多めに出していますので、ぜひお母さまのほうからも宿題をきちんとしているかのチェックをしていただければ幸いです。」
というように、書きます。
またこの文章と合わせて、簡単な図や公式などを描くようにしています。
そうすることで、保護者は「この先生の授業方法は間違いない!このまま子供を任せてみよう。」と思うからです。
ですからぜひ授業中で構いませんので、しっかりと報告ノートを作成するようにしましょう。
不登校児童への授業は、最初は緊張するかもしれません。しかし慣れてくると、楽になりやりがいも感じることでしょう。
高卒認定合格を目指す生徒
高卒認定試験(高等学校卒業程度認定試験)とは16歳以上の様々な理由で高校を卒業できなかった人や現役高校生等に向けて、進学や就職のチャンスを増やす目的で文部科学省が実施している試験になります。
受験者数は毎年3万人程度になり、家庭教師が高卒認定試験合格を目指す生徒を指導するケースも少なくありません。
高卒認定(高認)ってなに?
高認、高卒認定と呼ばれている高等学校卒業程度認定試験ですが、一体どのような試験なのでしょうか。
高等学校卒業程度認定試験は、様々な理由で、高等学校を卒業できなかった者等の学習成果を適切に評価し、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があるかどうかを認定するための試験です。
合格者は大学・短大・専門学校の受験資格が与えられます。また、高等学校卒業者と同等以上の学力がある者として認定され、就職、資格試験等に活用することができます。
文部科学省 高等学校卒業程度認定試験より抜粋
※高卒認定試験は平成16年まで大検(大学入学資格検定)という名称が使われていました。大検と高卒認定は同じ試験です。
- 高校卒業者を同程度の学力があるとみなされる
- 大学・短大・専門学校への入学試験や高卒資格が必要な国家試験などの受験資格を得る
- 地方自治体や一部の民間企業から高校卒業者と同じように扱われるため、就職に活かす事ができる
合格者は以上三つの効果を得る事ができる国家試験です。
合格者の約半数が大学・短大・専門学校に進学します。高校を卒業していなくても高認に合格すれば高校卒業者が受ける事のできる公務員試験や国家資格を受験する事も可能になるため、進学以外にも新しい選択肢が生まれます。
合格ラインは?
より多くの人に進学や就職のチャンスを与える目的で実施されているものなので、合格者数の定員はありません。受験者数に関わらず合格基準点に達していれば合格する事が可能です。
受験科目は国語・英語・数学・公民・地理歴史・理科の6教科8~10科目、マークシート形式になり、合格ラインは試験の難易度や平均点によって変動するものの、100点中40~45点程度が合格ラインと言われています。
合格した科目は次回から免除となるため、科目を絞って受験対策する事も可能です。合格者は40%と言われていますが1科目以上の合格者は80%程度になります。
基礎学力を問う試験なので、中学~高校一年生くらいで学習する内容になり受験科目の多ささえ克服できれば決して難しい試験ではありません。
合格へ導く指導方法
中学で学ぶ内容が理解できていれば合格できる試験ですから、生徒が高認合格を目指していても家庭教師の皆さんが臆することはありません。
大切なのは生徒の現時点での学力がどの程度なのか判断して、抜けている部分を遡り、しっかりと穴埋めしてあげることです。
過去問は文部科学省のページから無料で見る事ができます。上手に利用してみましょう。
試験は年に二度実施されるので、一度の試験で全科目合格を目指すことが厳しい場合は、受験科目を分けて対策をするなど、合格までの計画を一緒に考えてみましょう。
発達障害を持つ生徒について
発達障害とは、脳機能の発達が関係する生まれつきの障害です。
対人関係をつくったり、コミュニケーションをとるのが苦手です。また、その行動や態度によって
誤解されてしまう事も少なくはありません。
教育や親のしつけが問題ではなく、脳機能の障害によるものだと理解してあげて、
周囲の人がしっかりと接してあげる事が必要になってきます。
生徒と向き合おう
やはり最初は障害の事を気にしてしまいがちですが、まずはその子自身を理解する所から始めましょう。
どんな話に興味を持つのか?どんな趣味があるのか?など、じっくり向き合ってあげて、
そこから長所を伸ばし、弱い部分をフォローしてサポートする事が大切です。
正しく理解する
発達障害といっても、以下に示す通り、様々な種類の障害があります。
それぞれ特徴も違いますし、お子さんの得意・不得意も様々です。
さらに年代によって傾向も変化します。
- 自閉症
- アスペルガー症候群
- 注意欠陥/多動性障害(ADHD)
- 学習障害(LD)
自閉症だと、言葉の発達の遅れや、パターン化した行動、アスペルガー症候群はコミュニケーション不足、
ADHDは、集中が出来なかったり、じっとしてる事が出来ない、LDは、読み書き、計算が苦手だったりと、
それぞれ特徴があります。それぞれの特徴を把握し、対応する事が必要になってきます。
生徒への指導方法
一番大切なのは、環境を整えてあげる事です。勉強が出来ないのではなく、
集中したり、やり方が分からなくて、勉強が苦手だという事です。
例えば、周りに物を置かないようにしたり、雑音が気にならないように静かな環境にしたり、
言葉でなかなか理解してもらえない場合は、図にしてあげる事で、理解してもらえたりします。
同時に作業する事も苦手なので、区切りをつけてあげて、段階を経て進めていくことも大切になります。
その子にあったやり方で進めていきましょう。